それは秋も深まりを見せる頃、小雨の降る日の出来事でした。
いつものように会社へ向かう途中、紅葉が鮮やかに色づいた公園を通るのが日課です。
その日は小雨のためか広い園内もぬかるみが見られ、思うように歩くのが困難でした。
公園を出たところに、子供たちが喜びそうな丸い大きな石畳があります。
その石畳を飛び越えようとした時、自分の思ったところまで飛ぶことができず滑って転んでしまいました。
その瞬間は何ともなかったのですが、かなり無理な体勢で身体を支えたのを記憶しています。
それが大きな誤りだったのでしょう、こらえることなく流れに任せて大転倒すればあんなことにはならなかったと思われます。
出社して仕事を始めてしばらく経って後、左膝が鈍く痛むのを感じました。
その痛みは少しずつ増していき、遂には我慢できないほどにまでなったのです。
管理職をしている私は休暇をとるのもままならないため、昼休み前に1時間の休みをもらい地元では有名な整形外科へと直行しました。
幸いにも平日午前の遅めの時間であったため、待ち時間もなく診察を受けることができたのはラッキー以外の何物でもありません。
主治医は痛みの様子や状況を把握した後、レントゲン撮影を行いました。
撮影されたものを見ても、何も異常はありません。
「おかしい、MRIだ」と言って、MRI撮影をすることになったのです。
生まれて初めての体験で、あの奇妙な室内の音はヘッドフォンをしていても忘れられません。
20分程度が経過した後、左膝部分の映像が撮れたのでしょう。
私は再び診察室へと呼ばれました。